マレーシアの究極のご当地麺「ラクサ」【マレーシア】
マレーシアの名物麺「ラクサ」とは
マレーシアで人気の麺「ラクサ」。ちゅるっと麺をすすり、ごくっと汁を啜れば、ほわっと幸せな気持ちに包まれるスープ麺。ラクサの大きな特徴は、その種類の多さです。「ラクサは日本のラーメンと同じ。醤油、とんこつ、味噌のように地方で味が違う」とよく表現されますが、その種類たるや、ラーメンの比ではありません。
ペナンラクサ、ケダラクサ、ペララクサ、ラクサム、トレンガヌラクサ、ジョホールラクサ、サラワクラクサ……と、マレーシア13の州ごとに違うラクサがある、と言ってもいいほど。ラクサ好きのペナン出身者が、クアラルンプールでラクサを注文して「これ、ラクサじゃない!」と突き返したというのは、よくある話し。
つまりラクサは、究極のご当地麺なのです。港町ペナンは魚のだし、ボルネオ島は特産物の黒胡椒というように、その土地でよく採れる食材を使って作ります。土地の風土、そこから生まれた食文化を1杯の麺にギュ~ッと凝縮した料理、それがラクサです。
それでは、マレーシアで人気のラクサを紹介しましょう。価格は、1杯4~7リンギ(120~210円)、専門屋台で提供しています。
濃厚な辛みで汗がぽたり。カレーラクサ
クアラルンプールでラクサといえば、カレーラクサです。ココナッツミルク入りの濃厚なカレースープ。麺は中太の米麺、または黄色の卵麺。口に入れた瞬間はまろやかな味ですが、食べ続けていると、じわじわと辛みが襲ってきます。具は、鶏肉、ゆで卵、ラクサリーフ、油揚げ、魚のすり身。「カレーに油揚げ、魚のすり身?!」と最初は驚いたものですが、これが意外に相性ぴったり。クセになる味です。自家製の唐辛子調味料を別皿で提供し、さらに辛さを加えることのできる屋台もあります。
砕いた魚の身をそのままスープに投入。アッサムラクサ
アッサムラクサはペナンの名物麺です。2011年、アメリカのメディア「CNN」が発表したグルメランキングで、堂々の7位にランキング。世界が認めた味です。魚の身を細かく砕き、そのままスープに加えているので、冷や汁のようにトロミのある食感。果物の酸味をプラスし、ここに海老を発酵させた真っ黒なソースをひとたらしします。このソース、かなり強烈。ドリアンなみに存在感抜群の匂いがします。魚、酸味、発酵した海老という3つの個性的な味がミックスした、かなり個性的な味。魚好きの日本人にはぜひ試してほしい味です。
スパイスとハーブで幾重にも広がる味の層。ニョニャラクサ
マラッカ地域で食べられているのは、ニョニャラクサです。カレーラクサより辛さひかえめで、レモングラス、シナモン、八角などの多くのスパイスを使っているのが特徴です。スープに深みを加えているのは海老のだし。ココナッツミルクのまろやかな味に、海老の風味が非常にバランスがいいのです。具は、ゆで卵、魚のすり身、油揚げ、キュウリ。とくに千切りのキュウリが麺にみずみずしい食感を加えています。食べる直前に「リマウ」というスダチに似た果物をぎゅっと絞り、さわやかな酸味をプラスしていただきます。
さっぱり鶏スープに黒胡椒の辛み。サラワクラクサ
ボルネオ島北部、サラワク州で食べられているのが、サワラクラクサです。スープのベースは鶏だし。これを基本に、さらさらのカレースープや透明の鶏スープなど、お店によって様々な味にスープに仕上げます。麺は、ビーフン、卵麺、細めのクイテオなど。特徴的なのは、ボルネオ特産の黒胡椒を使うこと。私が以前食べたクチンのお店は、スープ表面をたっぷりの黒胡椒が覆っていました。香り高い黒胡椒は、口のなかでパンチのある刺激になり、後味はさっぱり。マレー半島ではなかなか味わえない希少なラクサです。
ご当地ラクサ、こんな名物もあります!
ケダ州で有名なラクサケダの屋台。昔、逃亡中の泥棒がこの屋台に食べに訪れ、先回りをして張りこんでいた警察に捕まった、というエピソード。
ジョホールのラクサは、スパゲティの麺を使用。厚揚げ、野菜をたっぷりのせて魚のタレにあえる冷やし中華風。お祝いの席でいただく特別料理なので、普段の屋台料理では提供されていません。
このようにマレーシアのご当地ラクサは、とても奥が深いんです。マレーシアでラクサ(LAKSA)を見かけたら、その土地で受け継がれてきた食文化に思いを馳せ、ゆっくりのんびりと味わってみてください。
【記事執筆】
All About マレーシアガイド 古川 音