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マレーシア料理に大事な三つの調味料。サンバル、ブラチャン、グラ・マラッカ

多種多様なマレーシア料理の味をひとことで言い表すのは非常に難しい。でも、思い切って表現するとすれば、わたし的にはこの2文字になります。「甘辛」。辛さの中に甘み(=うま味)があり、和食にも通じる奥深い味わい。この味を作りだす源となるのが、今回紹介する3つの調味料です。

唐辛子をベースにした赤い調味料、サンバル

マレーシアを代表する料理「ナシレマ」を調理中。ココナッツミルクで炊いたご飯の上に、サンバルがたっぷりかかっている

 

マレーシア料理の味の“核”となっているのが、サンバル。コクのある辛味調味料で、「ナシゴレン」や「ミーゴレン」を炒めるときに加えたり、マレーシア人が大好きな「ナシレマ」のソースとして欠かせないモノです。カレーの隠し味、サラダのドレッシング、麺に添えるタレとしても使われている万能調味料で、マレーシア料理で“辛い味”があれば、それはサンバル入りだと思ってほぼ間違いありません。とにかく、マレーシア料理は、サンバルがないとはじまらないのです。

 

サンバルを作っている様子。たっぷりの油に、すりおろした玉ねぎ、ペーストにした唐辛子等を入れ、2~3時間つきっきりで煮詰めていく

 

サンバルの主な材料は、唐辛子・玉ねぎ・にんにく・砂糖。舐めてみると、一瞬甘いようにも感じるうま味が口のなかに広がります。これは大量に入れる玉ねぎの味です。そのあとにジワジワと辛さがきて、食べすすめるほどに体が反応。額にじんわりと汗をかきながらも、甘みに惑わされて食べ続けてしまい、そしてまた食べたくなる、という中毒性を発揮します。

また、サンバルに使う食材や調理法は様々で、生の唐辛子を石臼で砕いて作るフレッシュなサンバルも。料理によって色々なサンバルを使い分けるのが、マレーシア料理の技なのです。

 

ナシゴレンを卵で包んだ料理「ナシパタヤ」。サンバルは調理にも使われているが、タレとしても提供。好みで辛さをプラスして食べる

強烈な香り! 発酵した海老ペースト、ブラチャン

ブラチャンはスーパーで購入できる。海辺の港町では、自家製のブラチャンを生産者が市場で直販していることもある

 

次に紹介するのは、ブラチャンです。長さ1センチ弱の小さなアミ海老を発酵させたもので、マレーシアだけでなく、東南アジア一帯で使われている大変ポピュラーな調味料。タイでは「カピ」、インドネシアでは「トラシ」とよばれています。

濃厚な“海の香り”と海老のうま味が特徴。とくに、独特な香りは和食には決してないもので、初めて嗅いだときは、「なんじゃこりゃー!」と目がしばしばしたほど。それがいつしか慣れ、むしろ無くてはならないものになり、この香りをかぐと瞬間的にマレーシアにトリップできる。ブラチャンはまさに媚薬なのです。

 

ブラチャンの原料となるアミ海老。マレーシア近郊の海でとれる

 

ブラチャンの作り方は、いたってシンプル。天日干しにしたアミ海老を樽の中で塩漬けにし、発酵させます。それを丁寧に砕いてペーストにしたら、粘土のように四角にぎゅっと固めて完成。使用するときは、スプーンや包丁で必要な分量を削って使います。

 

塩漬けにして発酵させたアミ海老を木の杵でついてペーストにするのが、伝統的な製法

 

空芯菜のサンバルブラチャン炒め。料理が運ばれると、ブラチャンの香ばしい匂いが食卓を覆い尽くす(写真提供:三浦菜穂子さん)

 

ブラチャンは、サンバルと一緒に野菜炒めによく使います。空芯菜、おくら、なすなどの淡白な野菜はブラチャンの香りにぴったり! ほかに、鶏のから揚げや魚の煮込み料理の隠し味にも重宝。マレーシア料理にコクとうま味と、そして、独特の香りを感じたら、それはブラチャンの味です。

椰子の樹液からつくる砂糖、グラ・マラッカ

グラ・マラッカは固形の状態で販売されている。かなり硬いので、かんな削りのような感覚で、包丁で削って使う

 

マレーシアのお菓子に欠かせない砂糖、それが「グラ・マラッカ」。椰子の木の樹液を煮詰めたパームシュガーで、甘さのなかに深いコクのある味です。最近ではなかなか出回っていませんが、純度100%のパームシュガーは、甘さのなかにしょっぱさに似たコクがあり、たとえるなら、みたらし団子の蜜にそっくり。このコクのある甘みが、マレーシアのお菓子を味わい深いものにしています。

ちなみに、マラッカで生産されているので、マラッカ産の砂糖(グラ)ということから、この名前になっています。

 

グラ・マラッカの工場の様子。竹筒を使って冷やし固めるので、円形状の形で販売されている

 

グラ・マラッカを使ったお菓子「オンデオンデ」。やわらかなお餅の中に、溶かしたグラ・マラッカが入っていて、噛むとプシュッと蜜が飛びだしてくる

 

かき氷「チェンドル」にもグラ・マラッカは欠かせない。白いのはココナッツミルクで、グラ・マラッカとの相性はバッチリ

 

辛いだけじゃなく、甘いだけでもない。幾重にも広がるうま味があり、一度食べるとすぐにまた恋しくなるマレーシア料理。その味のベースとなっているのが、手をかけて作られたこれらの3つの調味料。東京都内のマレーシア料理店でも、自家製のサンバル、マレーシア産のブラチャンとグラ・マラッカを使った料理を提供しているので、ぜひ味わってみてください。

 

更新日:2015年04月28日

 

【記事執筆】
All About マレーシアガイド 古川 音

 

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