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マレーシアのハラル事情。私が暮らしてみて思うこと

ハラルは何も特別なことではない。私たちが食べてもおいしい食事

マレーシアのイスラム教徒が集うマレー系の屋台。料理はすべてハラル

 

タイとシンガポールの間に位置するマレー半島とボルネオ島北部の2つの領土から成り立つマレーシアは、イスラム教を国の宗教としています。人口2970万人。そのうちおよそ65%がマレー系のマレーシア人で、彼らはイスラム教を信仰。国の宗教としてイスラム教を掲げていることもあり、いたるところでハラル食品が手に入り、ハラルのレストランは数多くあります。

イスラム教の国と聞くと、なんだか遠い感じがするかもしれません。ですが実際に4年間暮らしてみて、住みにくいと思ったことは一度もありませんでした。マレーシアは多民族の国なので、ノンハラル(ハラルでない=豚肉・酒など)も簡単に手に入ります。でもそれよりも、イスラム教徒の決まりごとであるハラルという環境のなかで、ハラルを意識せずに暮らしていた、と言ったほうがしっくりくるように思います。スーパーに陳列されているのはハラル食品ですし、マクドナルドやケンタッキーなどのファストフード店もハラル。イスラム教徒ではない私がハラル食品を買い、ハラル料理店でおいしい料理を食べても、何の問題もないのです。

ハラルとは、イスラム教徒が日常の生活の中で守っているルール

ケンタッキーの看板の左下。マレーシア政府ハラル認証機関が承認したマークが見える


ハラルとは、イスラム教徒が日常の生活のなかで守るルールです。おもに食関連の決まりごとで、アルコール、豚、豚由来の成分の摂取はすべてNG。鶏、牛などの豚以外の肉類についても、ハラルのルールにそった解体法をしていないものは食べられません。ハラルフードを提供するレストランや加工食品には、ハラルマークが表示されています。

屋台やレストランは、ターゲット層によってハラル対応かどうかを決める

ショッピングモール内のフードコート。ほとんどがハラル料理を提供している


多民族・多宗教のマレーシアには、ハラルレストランとノンハラルの両方のスタイルのレストランがあります。どの民族を顧客ターゲットにするかで、ハラル認証を取るか取らないかは変わってきます。

たとえばマクドナルドやKFCなどのファストフード店。マレーシア人みんなに来て欲しいので、ハラルレストランです。そもそも豚メニューの扱いがないので、メニュー内容は日本のものと変わりなく、味も同じ。

次に屋台。これは細かく分かれています。マレー系の料理を提供する屋台はハラル。中国系の屋台は、豚肉好きの中国系をターゲットにしているのでノンハラル。インド系の屋台はカレー好きのマレー系も大事なお客さんなのでハラルのことが多いです。ハラルをアピールするために、ハラルマークが飾られていることもあります。

ショッピングセンターにあるフードコートやレストランは、ほとんどがハラルです。中国料理もハラル化されていて、たとえば、通常であれば豚肉のチャーシューがのっているところを鶏チャーシューに変えて提供。工夫された料理で、味もなかなかおいしいです。

マレーシアのスーパーマーケットは、ノンハラルレジが別にある

通常のレジとノンハラルのレジは別。スーパーのなかに別会計のお惣菜屋さんが入っているようなイメージ


スーパーにもいろんな形態があります。マレー系が多く住む地域にある地元密着型のスーパーには、豚肉は売っていません。一方、中国系が多く訪れるスーパーやチャイナタウンの市場には、当たり前のように豚肉が売られています。

クアラルンプールの大型ショッピングセンター内の高級スーパー、たとえばISETANやJUSCOには、豚肉や豚のソーセージなどのノンハラルの商品が売っています。ただ、鶏、牛などの肉コーナーとは別の場所に陳列されているのでご注意を。「Non Halal」という看板が掲げてあり、たいていの店はコーナーに設置されています。ノンハラルコーナーで買い物をする場合は、その場で会計をすること。イスラム教徒は豚を触ることもできないのでレジも別になっています。

マレーシアの国から学んだこと。様々な価値観があるのは居心地がいい

マレーシアはハラルとノンハラルが共存する国です。異なる価値観が認められている。それはある意味、自分が食べたい食事を、おいしいと感じる料理を、自由に選択できるということ。少し大げさかもしれませんが、誰かに合わせることを強制されず、自分らしく生きられる、ということです。

マレーシアで暮らしてみて、価値観が多様だということは、宗教を問わず、多くの人にとって居心地のいい環境なのだと感じています。世界には様々な食文化があり、様々な価値観があります。理解する必要はないんです。色々あるよ、ということ知っていればいい。それを心の出発点にしたい、と思っています。

 

更新日:2015年03月23日

 

【記事執筆】
All About マレーシアガイド 古川 音

 

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