世界が太鼓判! 美と健康の源、万能食材パクチーの実力
パクチー専門店やパクチー調味料が続々登場し、ブームが拡大しつつあるパクチー。美容や健康にもいいといわれるパクチーの実力について、医療・美容ジャーナリストであり、All Aboutアンチエイジングガイドの宇山 恵子さんに聞いてみました。
身近な食材になりつつあるパクチー
パクチーはタイ語の呼び名ですが、原産は地中海で古代エジプト、ギリシャ、ローマの時代から調理と医療の両方に用いられてきた薬草です。最近のエスニック料理ブームでパクチーファンも増えて、スーパーの店頭でも手軽に手に入れることができるようになりました。独特の強烈な香りが嫌い……という方もいますが、パクチーの美と健康を支える実力は、世界各国で科学的に研究・実証されています。
ぜひこれから紹介するパクチーの健康パワーを理解して、おいしくって健康に良いパクチーを、食卓の仲間に加えてください。
まずはパクチーの栄養成分を簡単に紹介すると、濃い緑色の素になっているβカロテンは、高い抗酸化力で細胞の老化を抑え、免疫力を整えて風邪などの感染症を予防します。βカロテンは体内で吸収されるとビタミンAに変わり、皮膚や内臓の粘膜を強化して、美肌をつくり、腸の働きを整えます。もうひとつ、抗酸化力の強いビタミンEも豊富で、血行を促進して、肌を美しくする効果があります。さらに女性が不足しがちな鉄分も多く、血液を健康な状態に保ち、冷えや疲れを改善します。鉄分の吸収を良くし、肌の弾力を支えるコラーゲンの生成を高めるビタミンCも豊富です。
パクチーについての研究結果
続いて、世界で研究が進んでいるパクチーの健康効果について紹介しましょう。
まず韓国の大学で行われた研究によると、パクチーが皮膚の表面にある角化細胞(ケラチノサイト)が負ったダメージを修復して、さらにさまざまな酸化ストレスから肌を保護する働きがあることがわかりました(1)。これはパクチーが持つ抗酸化力によって、酸化ダメージに対するケラチノサイトの防御力が高まるためと分析されています。
別の韓国の研究では、パクチーが紫外線B波による肌のダメージを修復して、肌の光老化を防ぐ働きがあることが報告されています(2)。
ブラジルの研究では、パクチーの持つ成分が、口と歯の健康を損ねてしまう歯周病の原因になる細菌の増殖を抑える働きがあることを突き止めました(3)。
ポルトガルの研究では、パクチーの成分が、大腸菌、サルモネラ菌、セレウス菌、さらにメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA)の増殖を抑制する働きを確認しました(4)。古代からパクチーの細菌感染を抑制する働きは、習慣的に人々に理解されていましたが、現代科学でもしっかりその実力を確認されたのです。
エジプトの研究で、パクチーがウイルス性肝炎などによって発生する肝毒性を弱めることが明らかになりました(5)。 またインドの研究で、パクチーには肝臓を保護して、肝臓にたまった脂肪を減らし、肝機能の低下を抑制する働きがあることが判明しました(6)。
テキサス大学が過去10年間に行われた世界のさまざまな研究を分析した結果、パクチーを含む香辛料を多く消費するアジアの人々は、香辛料をそれほど消費しない欧米人に比べて、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、脳腫瘍、髄膜炎などの神経の慢性炎症が関係する病気になりにくく、パクチーをはじめとする香辛料に、神経変性疾患を予防する効果がある可能性を指摘しました(7)。
インドの研究ではパクチーが、心筋梗塞などで傷ついた心臓の筋肉を修復することを明らかにしました(8)。またマレーシアの研究でパクチーの持つ酵素の力で、水銀や亜鉛などの有害金属を体外に排出する働きがあることがわかりました(9)。別のマレーシアの研究では、パクチーが細胞のDNA損傷を修復して、がんの発生を予防することが明らかになりました(10)。
このようにパクチーには美肌づくりからがん予防まで、さまざまな成分が含まれていることが世界中の研究で明らかになってきています。
レモン&パクチーのホットドリンク
わたしもパクチーの大ファンで、ぜひ試していただきたいのが、レモン&パクチーのホットドリンク。パクチーは長い時間、熱湯に入れるとせっかくの成分が消失してしまいます。ドイツの研究では、100度の熱湯に1分以内であれば、パクチーの有効成分は維持されるそうです(11)。 わたしのおすすめは60度のお湯にレモンとパクチーを少々入れて、好みでハチミツを溶かしていただく方法。これならパクチーの香りも成分も楽しめます。
参考文献
(1)Skin pharmacology and physiology. 2012;25(2):93-9.
DOI: 10.1159/000335257.
(2)Journal of Medicinal Food. 07/2014.
DOI: 10.1089/jmf.2013.2999
(3)Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine. 2011:985832.
DOI: 10.1155/2011/985832.
(4)Journal of Medical Microbiology. August 23, 2011.
DOI: 10.1099/jmm.0.034157-0
(5)Toxicology & Industrial Health. 2014 Aug;30(7):621-9.
DOI: 10.1177/0748233712462470.
(6)Journal of Pharmacy And Bioallied Sciences 2011 Jul;3(3):435-41.
DOI: 10.4103/0975-7406.84462.
(7)Molecular Neurobiology2011 Oct;44(2):142-59.
DOI: 10.1007/s12035-011-8168-2.
(8)Food and Chemical Toxicology. 2012 Sep;50(9):3120-5.
DOI: 10.1016/j.fct.2012.06.033.
(9)The Scientific World Journal. 2013 Sep 30;2013:678356.
DOI: 10.1155/2013/678356.
(10)BMC Complementary and Alternative Medicine. 2013 Dec 9;13:347.
DOI: 10.1186/1472-6882-13-347.
(11)Food Chemistry. 2013 Sep 1;140(1-2):332-9.
DOI: 10.1016/j.foodchem.2013.02.077.
更新日:2015年02月25日
【記事執筆】
All About アンチエイジングガイド 宇山 恵子